わが国では、昔から身近なきのこ類として親しまれてきたシイタケ。独特の風味と歯ごたえ、そして見た目で、苦手な人も多いかもしれませんが、特に和食には欠かせない食材のひとつです。
定番の煮物やお出汁はもちろんのこと、近頃ではお茶にもシイタケが入っていたりと、きのこ類の中ではもっともよく口にするものといっても差し支えないでしょう。
さて、そのシイタケが実に多岐に渡る健康パワーを持つ食材であることを、ご存じでしたか?癌への効果からアトピーや虫歯予防まで、子どもからお年寄りまで、誰もがうれしいシイタケの力を、どうぞご覧ください。
日本人ならば、多くの人がかなり日常的に口にしていると思われる、シイタケ。でも、きのこ類であることは知っていても、それ以上のことは意外と知らなかったりしませんか?
まずはシイタケについて、その歴史や栽培方法などを見てみましょう。
シイタケの主な原産国は、日本や中国です。シイタケが入っている料理と言えば、和食か中華であるのも納得ですね。
シイタケを食用にしたという日本最古の記録は、室町時代のことです。しかし、栽培が始まったのは、その後200年ほど時を隔てた江戸時代となります。
当初はシイの木などに傷をつけ、そこにシイタケの元である胞子がつくのを待つという、気の長い方法で栽培していたようです。
シイの木に生えるため、「シイタケ」と呼ばれるようになったんですね。
現在のシイタケの栽培法には、以下の2種類があります。
菌床栽培は、シイなどの木は使わず、おがくずなどに胞子を付けてハウス内で栽培する方法です。
ハウス栽培なので、一年中安定して採ることができます。柔らかくてやさしい味わいで、主に生シイタケとして出荷されます。
原木栽培は、伐採したシイやクヌギの木に直接菌を植え付けて栽培するという、いわば昔ながらの方法です。
大きくて固めの食感で、味や香りも濃い目です。主に、干ししいたけとして使われます。
何となく栄養豊富なイメージのあるシイタケですが、具体的には以下のような栄養素を含んでいます。
ご覧のように、炭水化物からビタミン・ミネラルまで豊富な栄養素から構成されています。
特にビタミンB群の中の葉酸や、カルシウムの吸収を助けるビタミンDなど、子どもや妊娠中の女性などにもオススメの栄養素がたっぷりです。
価格もお安いので普段からよく料理に使う機会も多いですが、値段のやすさに対して栄養素が豊富という、非常にコストパフォーマンスが高い商品と言えそうですね。
椎茸はダシが出ておいしい食材だけど、所詮きのこ…というイメージを持っている方が多いと思います。
先ほど椎茸に含まれる栄養素の一覧を見ていただきましたが、非常にたくさんの種類が含まれていることがわかります。
しかもそれらは女性に嬉しい成分がほとんど!具体的にどんな栄養素がどのような嬉しいことをもたらしてくれるのか説明していきます。
シイタケに含まれる栄養素をより詳しく見ていくと、「エリタデニン」という成分が見つかりました。聞き慣れない名前ではありますが、このエリタデニンが最近注目を集めています。
エリタデニンの効果を確認した、ラットを使った実験の結果で、シイタケに含まれるエリタデニンには、血漿コレステロールを低下させる効果があることが分かったのです。しかも、エリタデニンはきのこ類の中でもシイタケに非常に多く含まれているんです。
この研究では、エリタデニンが含まれていないエノキタケでも、シイタケと同様に血漿コレステロールが低下することも確認されています。でも、そのメカニズムは分かっていません。
ということは、メカニズムが明確になっているのはシイタケのエリタデニンであり、血中のコレステロール値が高くて気になっている方は、シイタケを食べるようにすると、確実な効果が期待できるということですね。
他のきのこ類でも同様にとれそうなイメージがしますが、現在はまだマッシュルームとしいたけにしか含有されていないとわかっているんです。しかもマッシュルームに含まれている量はしいたけに比べるとかなり少ないとのこと。
つまり、しいたけを食べることでしか得ることが出来ない成分と言えるんです!
女性は更年期以降、悪玉コレステロールの数値が高くなる傾向にあると言われています。
これは女性ホルモンの「エストロゲン」が関係しており、きちんと分泌している時期であれば悪玉コレステロールの量は男性よりも少ないのですが、だんだんと年齢を重ねてエストロゲンの量が減少していくことにより、悪玉コレステロールの量が増えていくというわけです。
悪玉コレステロールが増えると動脈硬化などの原因となるため、若いうちからさらさらな血液を意識しておくことは必須と言えます。
とはいえ毎日しいたけを食べるのも…という方でも大丈夫。急須でお茶を淹れる際、お茶っ葉と一緒に干ししいたけを入れて作る「しいたけ健康茶」を作ってみてください。
お茶を飲むなら毎日出来ますし、急須で入れるのがちょっと面倒ではありますが毎日のメニューを考えるよりはラクなのではないでしょうか?
しいたけは血液サラサラをサポートし、脳卒中や心筋梗塞などのトラブルの抑制作用がある素敵な食材なので、手軽な方法で取り入れていきたいですよね。
さらにしいたけは食物繊維がとても豊富です。干ししいたけであればなんと100g中に含まれる食物繊維は約40g!他の食品と比較してみましょう。
※100g中の含有量。単位はすべてg
食品名 | 水溶性 | 不溶性 | 総量 |
---|---|---|---|
干ししいたけ | 3 | 38 | 41 |
しいたけ | 0.5 | 3 | 3.5 |
大豆 | 1.8 | 15.3 | 17.1 |
絹ごし豆腐 | 0.1 | 0.2 | 0.3 |
乾燥ひじき | – | – | 43.3 |
切り干し大根 | 3.6 | 17.1 | 20.7 |
いかがでしょうか?乾燥ひじきなどの海藻にはさすがにかないませんが、干ししいたけはかなりの量の食物繊維を含んでいることがわかると思います。
食物繊維が豊富ということは、まず便秘に効果があります。女性は便秘気味の方も多いですよね。便秘薬を飲んでいる方もいると思いますが、やはり自然の食物繊維で出すほうが健康的と言えます。
さらに、食物繊維は不要な脂肪を包み込み体外に排出してくれる働きも持っています。ダイエット効果も期待出来るということですね。
さらにさらに!まだあります。
女性は基本的にカルシウム不足で、「骨粗しょう症」になりやすいと言われていますよね。
そこもしいたけを摂取することで解決できてしまう…なんて言ったらどうでしょうか?
しいたけには、日光に当たることで「ビタミンD」に変化する「エルゴステロール」という成分を持っています。
じゃあ干ししいたけを食べるの?というわけでもありません。生シイタケであっても、食べる前に1時間~30分程度日光に当てておく(天日干し)だけでビタミンDの含有量が約2倍に増えると言われているんです。
ビタミンDは骨を強くするために必要な栄養素。カルシウムを含んだ食品と一緒に摂取することで骨粗しょう症を防ぐことが出来ます。
特に更年期あたりはコレステロールも骨粗しょう症も気になってくる時期。この2つをしいたけというひとつの食材で解決することが出来ちゃいます!
血液中のコレステロールを下げてくれるので、最近コレステロール値が気になる…という方はしいたけ茶などを取り入れてみてはいかがでしょう。
前のトピックでは、シイタケの食物繊維の多さや、血漿コレステロールを低下させる働きを持つことをご紹介しましたが、次はレンチナンという成分についてお話します。
これまた聞き慣れない言葉ですが、アトピーやガンに効くというすごい健康パワーを持っているんです。
近年は、特に子どものアトピー性皮膚炎が増えていますが、そんな方々に嬉しい効果もシイタケにはあるんです。
アトピー性皮膚炎の患者に、シイタケ由来のレンチナン(引用文中では「微粒子化β-グルカン」)を3か月間摂取してもらい、その前後で皮膚炎がどう変化したかを調べた研究があります。
その研究結果、シイタケのレンチナンがアトピー性皮膚炎のいろんな症状を改善させ、しかもダニやスギ花粉などのアレルギーも改善させることがわかりました。
アトピーやアレルギーも免疫に関する症状。しいたけに含まれるレンチナンが免疫力を高めることによって改善していく…ということですね。
特に小さいお子さんのアレルギーが心配、という方や自身のアレルギー症状に悩んでいる方はしいたけを積極的に食事に取り入れてみてはどうでしょうか?
細かく刻めばわかりにくいですし、肉厚なものを購入ししいたけステーキとして食べるのもおいしいですよ。
実際の医療現場でも使用されているのですから、その効果は折り紙つきといってもいいでしょう。
最近はアレルギーに悩む人が増えてきていますので、シイタケの恩恵を受けられる人もきっと多いのではないでしょうか。
ここまでお読みいただいて、シイタケの持つ健康効果に驚いている方もいらっしゃることでしょう。
でも、シイタケのパワーは、まだまだあるんです!
それは「虫歯予防」の効果。こちらも小さいお子さんをお持ちの方なら嬉しい効果ではないでしょうか?
次にご紹介するのは、シイタケのむし歯に対する効果です。オランダで行われた実験で、シイタケのSF4は象牙質ミネラル除去に強い抑制効果を示し、口腔健康に関連する細菌の移動を誘導したそうです。
つまり、シイタケに含まれる成分が、歯の象牙質の脱灰に強い阻害効果を示し、むし歯予防への効果が期待されているということなのです。
歯は、糖やミュータンス菌、そして元々の歯の性質などが原因となって、エナメル質から徐々に象牙質、神経へとむし歯が進行していきます。
上記の実験によれば、シイタケ抽出物がむし歯の原因となる糖を分解したり、象牙質が浸食されるのを防いだりすることで、むし歯を予防したり進行を抑えたりする効果が期待できると思われるのです。
もっとも、この実験は研究室内で行われたもので、マウスや人間など、実際の生物の歯に対しての研究結果ではありません。
なので、人間のむし歯予防に絶対確実に効果があるかどうかは、今後の研究を待たなければなりません。とはいえ、何らかの効果があることは間違いないと思われますので、むし歯が気になる人は、シイタケを意識的に摂ってみはいかがでしょう。
もちろんしいたけを食べていれば虫歯にならない、というわけではありません。どうしても体質的に虫歯になりやすい方もいます。
しかしきちんとオーラルケアをしながら、それにプラスしてしいたけを意識的に摂取することで虫歯になりにくい口内環境を作ることは出来るかと思います。
最後にご紹介するのは、免疫力に関するシイタケの効能です。
先ほどガンやアトピーにも効果があるとご紹介しましたが、それも免疫能力の話でした。
そう、しいたけには免疫能力を向上させる素晴らしい効果があるということです。
この実験の中で、顕著に増えたというNK細胞は、がん細胞をやっつけてくれるありがたい免疫細胞です。
また、明らかにシイタケによって増加したというB細胞は、NK細胞などと同じ「リンパ球系」の免疫細胞です。
B細胞の表面には抗体がくっついており、体内に入ってきた細菌や異物をキャッチして退治してくれます。
また、一度やっつけた異物のことは覚えており、次にまた侵入されたときに素早く対応してくれる働きもあります。つまり、免疫を作ってくれるということですね。
あくまでしいたけ菌糸体という成分を抽出したものですので、生しいたけや干ししいたけで同様の効果を得るのは難しいと思いますが、がん細胞でこれだけの免疫能力が回復していることから考えても、しいたけのすごさがわかりますね。
最近は寒暖の差が激しかったり、日によって気温が違うなど昔に比べて体調を崩しやすくなっています。
急に倒れたりしないためにも、免疫力を上げるためにしいたけは取り入れていきたいですね。
特に癌に関しては、進行性の肝細胞がんを改善するだけでなく、NK細胞を増やしてくれるという側面からの効果も期待できます。
非常に栄養価が高い食材ですが、どうしても苦手…という方もいると思います。
そんな方は干ししいたけを使用した出汁を料理に使ったり、しいたけ健康茶から摂るようにしたり、細かく刻んでハンバーグやぎょうざに入れるなどの工夫をしてみてください。
ちょっと苦手だから…と、この素晴らしい効能を取り入れないのは勿体無い!ぜひ積極的に食べていただきたい食材です。
身体の隅々まで健康に長生きするために、シイタケはきっと大きな役割を果たしてくれます。毎日のメニューに今まで以上に取り入れて、家族そろって元気に過ごしましょう!