やわたまち
山形県飽海郡八幡町のスキー場開発問題
山形県飽海郡八幡町スキー場問題1997年8月10日 | 現地調査で問題多いと/県弁護士会環境対策委が現地調査 | 毎日新聞サイバー編集局/環境のページ「鳥海山スキー場」より |
山形県弁護士会の環境保全公害対策委員会(高橋敬一委員長)は8月10日、八幡町内の鳥海山南ろくに計画されているスキー場予定地の現地調査を行った。環境影響評価(アセスメント)法の成立(6月)に先立ち、日本弁護士連合会(日弁連)が実効性のある法制定を求める意見書を国や国会議員に提出するなど、環境問題が法律面でも議論される中、同委員会も県内での重要問題となっている同スキー場計画の経過や問題点を検討しようというもので、高橋委員長は「強い関心を持って調査していく」としている。
同スキー場問題は、事業主のコクド(本社・東京)を代行して町が作成した環境アセスをもとに1995年3月、県の自然環境保全審議会が事業を適当とする答申を行い、高橋和雄知事が事業決定した。
しかし直後、日本山岳会の調査でイヌワシの営巣地が発見されたため、県は猛きん類の専門家らから成る検討委員会を設置したが、「開発容認を押し付けている」と県の姿勢に反発した過半数委員がボイコットするなど、特異な経過をたどっている。
環境保全公害対策委では先月、猛きん類の専門家を招き、イヌワシの生態や、生息に必要な自然環境などについて聴取。9日は「鳥海山の自然を守る会」(池田昭二代表)から、スキー場計画の経過や問題点について意見を聞き、10日に高橋委員長ら4人で予定地周辺を視察・調査した。
高橋委員長は、「予定地周辺にイヌワシの営巣地は無いとしたアセスのずさんさや、それを承認した審議会、それら諮問機関の人選など、問題が多い。イヌワシ検討委が混乱したのは良識ある委員が多かったからだろう」と指摘。今後については、「ずさんなアセスがうのみにされるような行政プロセスなら問題であり、一連の経過を明らかにする必要がある」と話している。
【酒田通信部・菊地正太郎】
山形県飽海郡八幡町スキー場問題1997年9月5日 | 町がスキー場計画を断念/苦渋の決断、12年の論議に幕 | 毎日新聞サイバー編集局/環境のページ「鳥海山スキー場」より |
山形県八幡町内の鳥海山南ろくに町と大手開発会社「コクド」(本社・東京、山口弘毅社長)が計画していたスキー場開発問題で、後藤孝司・同町長は9月5日、計画断念を発表した。
国天然記念物で絶滅危ぐ種のイヌワシの計画地近くでの繁殖が明らかになり、専門家による検討委員会の「イヌワシの高利用域への影響を避けるべき」などの提言を踏まえてコクド側が難色を示したためで、コクドが開発要請を受諾してから12年目の決着。地域振興策と自然保護の立場の対立などからさまざまな曲折を経てきたが、後藤町長は「時の流れの中で、環境問題などの社会的状況が変わった」と総括し、苦渋の決断となった。環境庁が昨年8月にまとめた猛きん類保護指針に沿った提言で大規模開発が撤回されるのは全国で初めて。